フェルメールの青の輝き――ラピスラズリから西陣織へ
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2026年8月に大阪中之島美術館で開幕する「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展」の見どころである「ラピスラズリの青(ウルトラマリン)」の秘密を解説。さらに、宝石の輝きを絵画の中に閉じ込めたフェルメールと、ラピスラズリなどの天然鉱物を西陣織の伝統技法「引き箔」で帯へ織り込む「河瀬満織物」の共通した美意識やものづくりの世界観をご紹介します。
17世紀オランダを代表する画家、ヨハネス・フェルメールの代表作《真珠の耳飾りの少女》が、いよいよ大阪にやってきます(2026年8月21日〜9月27日、大阪中之島美術館)。
今回の来日は2012年以来、実に14年ぶり。所蔵元であるマウリッツハイス美術館の改修に伴い実現したもので、公式サイトでも「日本への貸し出しはおそらく最後になる」と紹介されている貴重な機会です。
フェルメールが愛した色彩の顔料、ラピスラズリの歴史ははるか古代へとさかのぼります。
主要産地は現在のアフガニスタン北東部バダフシャン地方。17世紀当時も、この険しい山脈から採掘された原石がシルクロードや海を越えてヨーロッパへ運ばれました。「海の向こう」を意味する「ウルトラマリン」の名は、この果てしない旅路に由来します。
また、古代エジプトのツタンカーメンの黄金マスクにも象嵌として使われるなど、ラピスラズリは何千年もの昔から人類が特別な価値を見出してきた美の象徴でした。
ラピスラズリの魅力は、原石の美しさだけではありません。石に含まれる青色鉱物「ラズライト」のみを抽出し、顔料として加工するには、不純物を取り除く膨大な手間がかかりました。原料の希少性と手仕事の難しさから、当時は金以上の価値を持つ極めて高価な塗料でした。
2018年の科学調査では、《真珠の耳飾りの少女》のターバンに最高級の天然ウルトラマリンが豊富に使われていたことが証明されています。フェルメールは、安価な絵の具で代用することなく、この特別な素材を作品に用いました。彼が求めたのは、単なる「色」ではなく、光を内包する宝石そのものの質感と普遍的な美しさだったのです。
「素材の持つ普遍的な美しさを理解し、手仕事によってその魅力を引き出す」という美学は、京都・西陣で170年以上の歴史を紡ぐ「河瀬満織物」にも強く通底しています。
西陣織には、和紙に箔や素材を施して細く裁断し、緯糸(ぬきいと)として織り込む「引き箔(ひきばく)」という伝統技法があります。河瀬満織物ではこの技術をさらに進化させ、独自に開発した特許技術「ダイヤモンド引き箔(Diamond Textile)」を展開しています。
ダイヤモンドやラピスラズリといった天然石の粉末を和紙と組み合わせて織り込むことで、光の角度によって表情を変える、日本発のラグジュアリーテキスタイルを生み出しています。
17世紀のオランダで、フェルメールはラピスラズリから生まれた塗料でキャンバスを彩りました。そして現代の京都で、河瀬満織物はその鉱物の輝きを帯へと織り込んでいます。
時代も国も超えて通底するのは、「最高の自然素材を用い、職人の手仕事によって特別な表現を生み出す」というものづくりの情熱です。
大阪でフェルメールの作品を堪能したあとは、ぜひ京都・西陣へ。絵画の中に宿る輝きを、身にまとう織物として体験してみませんか。
河瀬満織物は、アルフォンス・ミュシャ財団(Mucha Foundation)より、西陣織による作品制作を正式に許諾された世界唯一の織元です。
約10年前、ミュシャ財団の皆様に京都・西陣の工房をご訪問いただき、織物ならではの立体感や絹の質感、そしてプリントでは表現できない光の反射や繊細な織りの美しさをご覧いただきました。
ミュシャ作品の持つ緻密な線や装飾性を西陣織で忠実に再現する技術をご評価いただいたことが、このプロジェクトの始まりとなりました。
KAWASEMAN&MUCHA
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